- 糖尿病の家族がいる
- 空腹時血糖が100 mg/dL超えてきた
- 太ってきて糖尿病が心配
など自分は糖尿病かも?と悩まれる方は多いでしょう。まだ様子を見ても良い人もいれば、すぐにでも治療を開始したほうが良い人もいます。特に以下のような人は受診が必要です。
間違ったイメージを払拭したい
「乱れた生活習慣をする人が糖尿病になる」「糖尿病は贅沢病」「糖質を摂取しなければ治る」といった古い考えを聞くことがあります、すべて極論で不正確です。物事はそう単純ではなく、一元化できません。糖尿病は「インスリンの作用不足」からなり、「インスリン分泌不全」および「インスリン抵抗性」には遺伝的背景があるため、生活習慣のみが原因で糖尿病を発症することは稀です。あくまで肥満や食事、生活習慣は悪化要因のひとつです。
血糖値で悩まれる方に向けて、糖尿病という病気について、血糖値の見方、治療について、やさしく解説していきます。
糖尿病について
正常な血糖値の範囲は狭い
正常の血糖値は、食前・食後を含め70〜140mg/dLの狭い範囲内に厳密にコントロールされています。糖尿病は血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作用不足で慢性的に血中のブドウ糖が高い状態(高血糖)が持続する疾患です。インスリンの作用不足には、2つの側面があります。
- インスリンが十分に分泌されなくなる(分泌能の低下)
- インスリンが効きにくくなってしまう(インスリン抵抗性)
インスリン分泌能とインスリン抵抗性のバランス
分泌能と抵抗性のバランスが崩れると分泌されたインスリンでは血糖値を下げられなくなってしまい糖尿病になります。例えるなら下の図のような綱引きです。インスリンの分泌が少なくて、高血糖へ、抵抗性が強くて高血糖へ…というイメージです。
インスリン分泌、インスリン抵抗性どちらにも遺伝的な体質が影響します。どちらの要素が強くて高血糖になってしまうのかは、太っているか痩せているかで大まかに判別できます。体質的にインスリンの分泌量が少ない患者さんは痩せている事が多いです。一方、インスリン抵抗性が強い患者さんは肥満があります。(※両者が混在する場合や、複雑な場合もあります)
血糖値の指標について
空腹時血糖とHbA1c
糖尿病の診断に有用な血糖値の指標として、以下の4つがあります。
- 空腹時血糖値
- HbA1c(ヘモグロビンA1c)
- 随時血糖
- 糖負荷2時間後血糖
このうち、重要なのが空腹時血糖とHbA1cです。
空腹時血糖値は、絶食後(食後10時間以上経過)での血糖値です。健康診断等で朝食を食べていない状態は空腹時血糖に該当します。HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、 赤血球の成分Hbが糖と結合したもので、過去1,2ヶ月の平均血糖値を反映します。食事の影響を受けないことから、糖尿病の診断・治療効果の指標に頻用されます。
空腹時血糖とHbA1cの値によって、「糖尿病型」「境界型」「正常高値」「正常型」を判定します。
「糖尿病型」は糖尿病の診断基準に該当する値で、糖尿病の疑いが最も高い分類です。空腹時血糖 126mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上が「糖尿病型」に該当します。空腹時血糖 100mg/dL未満、HbA1c 5.6%未満が「正常型」に該当します。「正常高値」は将来的に糖尿病型への進展する可能性がある分類で、「境界型」はすでに「糖尿病型」である可能性が否定できない型(食後高血糖が隠れている場合があり、隠れ糖尿病なんて言われ方もします)
どの型に該当すれば受診すべき?
結論、正常型以外は異常値ですので、受診をお願いします。特に「糖尿病型」は既に糖尿病である可能性が高い血糖型ですので、異常を指摘された場合は、速やかに医師にご相談ください。「境界型」の人も、実は糖尿病型の域に達している人も多く、再検査や精査(糖負荷試験)で糖尿病の診断がつく可能性があります、必ず受診をしましょう。「正常高値」の人は、家族歴や肥満度によって介入する余地はございます。総じて空腹時血糖100mg/dL以上、またはHbA1c 6.0%以上の人は受診を推奨します。(画像 再掲)
糖尿病の治療について
個々の患者に応じて治療法を選択します
治療法として、食事療法、運動療法、薬物療法があります。食事運動療法はすべての糖尿病患者さんの基本となる治療法ですが、それだけで良好な血糖コントロールが得られるケースは多くありません。病態や高血糖の程度に応じて、個別に薬物療法を選択し、血糖コントロール目標(HbA1c 7.0% 未満)を目指します。
血糖コントロールの目標はHbA1c 7%未満
一般の成人は、合併症の発症・悪化を予防するための目標として、HbA1c 7.0%未満を目指します(HbA1c 7%に対応する血糖値としては空腹時血糖 130mg/dL未満、食後2時間値血糖 180mg/dL未満)。年齢や活動レベルによって目標も異なります。若い人は6.0%未満、コントロールが難しい人は8.0%未満など柔軟に設定します。(担当医師と相談ください)
薬物治療が中心です
食事運動療法のみでHbA1c 7.0%未満達成が難しい場合は、早期より薬物療法を併用します。実際の治療の中心は薬物療法です。以下の理由が挙げられます。
- 経過観察では改善しないケースが多い(様子を見ても良いことはない)
- 血糖降下作用以外に、体重減少作用、臓器保護、内臓脂肪減少作用などが期待できるため
- 体重が適正化すれば抵抗性が改善し治療反応性が良くなるため
現在、糖尿病の治療薬は豊富に選択肢があります。血糖値を下げるだけでなく、以下のような薬剤には体重減少作用、心血管・腎臓保護などの体に良い影響を及ぼす薬剤も多く出てきています。
- メトホルミン(ビグアナイド薬)
- SGLT2阻害薬
- GLP-1受容体作動薬(またはGIP/GLP-1受容体作動薬)
最終的な治療薬の選択は患者背景やリスク、費用など様々な観点から使用薬剤を決定します。糖尿病の治療はHbA1c 7.0%未満を目標に複数種類の薬剤を組み合わせて行うことが多いのが特徴です。1型糖尿病の人や経口薬では目標に届かない場合は、インスリン製剤を使用します。治療薬に関して詳しく知りたい方は下記リンクを参照ください。
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治療経過の紹介
初めて治療を始める方に向けて、当院での糖尿病治療の経過の紹介をいたします。治療薬をどう追加して、HbA1cがどう改善していったかを
糖尿病の治療反応性は患者背景によって大きく異なります。紹介データは、あくまでも当院での一例です。他院で治療中の方は自己判断でやめたり・変更したりすることはおやめください。必ず医師と相談の上、治療方針を決定してください。
痩せれば薬が不要になる可能性はある?
あります。あきらかな悪化要因(肥満、清涼飲料水多飲、ストレスなど)がある人であれば、原因を解消すれば薬物療法が不要になる人がいます。わかりやすいイメージ像としては、「太ってしまい、肥満(BMI 25以上)になって血糖異常を指摘されるようになった若い人」です。このような人は肥満を解消することで、治療薬が不要になる可能性が十分にあります。
ただこのような人でも糖尿病の体質は持ち合わせているため、加齢や他の悪化因子が重なると将来的に糖尿病の状態に陥る可能性が考えられます。したがって、糖尿病の場合、薬物治療をせずとも血糖コントロールが正常型になった場合でも「治癒」とは考えず「寛解(かんかい)」といいます。
治療目的は健康寿命を保つこと
糖尿病による高血糖状態を放置していると、様々な合併症のリスクを高めます。心筋梗塞、脳梗塞などの致死的な合併症から、失明、腎不全、感覚障害、歯周病、骨粗鬆症、認知症、悪性腫瘍まで高血糖状態は体に良い影響はひとつもありません。糖尿病の治療目的は、合併症の発症・進展を阻止し、健康な人と変わらない生活の質(QOL)を維持し、健康寿命を保つことにあります。
悩まずご相談をお願いします
糖尿病は遺伝的背景が強い疾患です。決して自堕落な生活習慣だけが原因ではありません。昔の医師で「血糖値が悪いのは患者のせいだ」と叱責し、患者さんが外来から遠ざかってしまうことも少なくありませんでした。そんな診療は絶対に行ってはなりません。通院を中断した結果、重大な合併症が進展する方もいます。まずは外来に定期的に受診していただく、それだけで100点です。合併症予防のために治療薬を増やさなくてはならない場面もございますが、可能な限りで患者さんの希望や考えに寄り添いながら治療方針を決定していきます。また薬剤調整だけでなく、食生活・運動習慣の見直しから診療の不安までスタッフ一同でサポートいたします。
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