高尿酸血症とは
突然ですが、血清尿酸値の基準値ってご存知ですか?
血清尿酸値の基準値は 7.0mg/dLです。ですので、高尿酸血症とは、血清尿酸値が 7.0mg/dL 以上の状態を指します。これは概ね尿酸が血液中に溶解できる上限の濃度で、これ以上となると結晶として析出して、痛風を引き起こしたり、腎障害(痛風腎)の臓器障害まで引き起こします。
日本人の高尿酸血症の発症頻度は男性で20%、女性で5%とされ、男性の発症の頻度が高いとされています。
高尿酸血症は併発症も多い
高尿酸血症が発覚したら、その他の病態が隠れていることがほとんどです。高尿酸血症の患者さんは約80%には高血圧、肥満、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病を合併しており、脳梗塞、虚血性心疾患などの合併症の発症率を高めていると考えられているため、放置は望ましくありません。
高尿酸血症の多くは自覚症状がない
高尿酸血症の多くは自覚症状はなく、健康診断で指摘されます。しかし、症状がないからと言って様子を見るのはオススメできません。高尿酸血症は痛風、腎障害のリスクです。高尿酸血症により引き起こされる痛風の発生率は、30歳以上の男性では1%を超えています。
末期腎不全のリスクが高まります
高尿酸血症を放置していて一番怖いのは、腎障害です。高尿酸血症では尿酸の結晶が腎臓に蓄積して、「痛風腎」という状態になり、腎機能が徐々に低下していきます。その状態を放置して、腎機能障害が進行すると、末期腎不全という人工透析が必要な状態に至るリスクがあります。ここでひとつの研究結果を紹介します。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15384015/
1993年の集団健診の血清尿酸のデータが得られた20歳以上の48,177人の受診者(男性22,949人、女性25,228人)を対象とした研究で、末期腎不全の発症リスクに対する高尿酸血症(男性で血清尿酸値 7.0 mg/dL [> or = 416 micromol/L] 、女性で 6.0 mg/dL [> or = 357 micromol/L] )が有意かどうか評価したものです。高尿酸血症の有無で、1000人あたりの末期腎不全の発症人数は、男性では血清尿酸値 7mg/dL未満の人では1.22人だったのに対し、血清尿酸値が7 mg/dL以上の集団では4.64 人、女性では血清尿酸値 6 mg/dL未満の人では0.87人だったのに対し、血清尿酸値が6 mg/dL以上の集団では9.03 人でした。
ざっくりと結果を伝えると、男性では血清尿酸値が7mg/dL以上だと、末期腎不全のリスクが2倍になり、女性で血清尿酸値が 6mg/dL以上だとリスクが5.77倍になるということです。
高尿酸血症の定義は「血清尿酸値が7mg/dL 以上」です。女性ではそれを下回る、6 mg/dLでも腎障害のリスクがあることは少し驚きです。
高尿酸血症は放置せずに一度ご相談ください
高尿酸血症があるからと言って、すぐに薬物治療を開始するわけではございません。 まずは高尿酸血症の原因となっている生活習慣や肥満が無いかを確認し、生活習慣の見直しから始めましょう。
その上で、余分なエネルギーを取りすぎて肥満になっていないかの判定も必要です。当院ではInBodyという医療用の体成分分析を導入していますので、隠れ肥満をあぶり出すことも可能です。
InBody による体成分分析いたします。
治療を始めるのはいつ?
これは値の大きさや、合併症の有無などで判断します。ガイドラインに則り、痛風関節炎の既往がある方は、血清尿酸値 > 7.0mg/dLで治療を推奨されます。腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの合併症がある方は、血清尿酸値 ≧ 8.0 mg/dL で推奨され、合併症がない方でも、血清尿酸値 ≧ 9.0 mg/dLで治療開始が推奨されます。
引用: sawai 高尿酸血症・痛風ハンドブック
ガイドラインは一番重要な治療の指針となるものですが、治療開始の判断は個別に行います。
肥満や飲酒習慣から高尿酸血症を呈している場合は、減量・減酒が最優先ですし、糖尿病・高血圧などの他の代謝性疾患を併発している場合は、薬物治療を速やかに開始したほうが良いでしょう。腎障害は不可逆(一度腎機能を残ってしまうと戻らない)ことが多いですので、尿酸値くらいと放置せず、健康診断で指摘されたら、必ずご相談ください。