高血圧放置していませんか?高血圧は早めの治療が大切です。
高血圧は動脈硬化の代表的な要因で、高血圧自体は症状が無くても、脳卒中や心筋梗塞による死亡リスクを急激に上昇させるためサイレントキラーと呼ばれます。
基礎疾患がない人であっても、Ⅱ度高血圧(収縮期血圧 160mmHg 以上)は治療を強く推奨します。
このページでは高血圧について、そのリスク、治療などについて解説していきます。
ここからは高血圧のリスクや治療のメリットを記載していきます。
高血圧について
正常な血圧は120/80 mmHg未満
正常血圧とは、診察室血圧で上の血圧が120 mmHg未満 かつ 下の血圧が80mmHg未満 です。(家庭血圧はそれぞれ5 引いた 115/75 以下が正常血圧)
ちょっと高い血圧120以上、140未満
正常の血圧以上、すなわち上の血圧が120mmHg以上は正常高値血圧、高値血圧とされ高血圧と正常の境界型に位置します。このちょっと高い血圧(120以上、140未満)は経過観察することが多い血圧です。(※高リスク患者は治療対象)
分類 | 診察室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) | ||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
正常血圧 | < 120 かつ < 80 | < 115 かつ < 75 | ||
正常高値血圧 | 120〜129 かつ < 80 | 115〜124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130〜139 かつ/または 80〜90 | 125〜134 かつ/または 75〜84 |
高血圧はいくつから?
家庭血圧 135/85 以上、院内血圧 140/90 以上が高血圧です。
肥満はリスク
肥満は万病の元です。BMI 20 kg/m2 未満の人の高血圧の発症リスクを1とすると、BMI25.0〜29.9 kg/m2の場合、高血圧発症リスクは1.5〜2.5倍に上昇します。
高血圧のリスク
正常血圧の120/80mmHgより高くなればなるほど脳心血管死亡のリスクが上昇します。
日本人の中年、前期高齢者におけるデータをお示しします。(後期高齢者でもほぼ同様の傾向です)
[中年 40〜64歳]
[前期高齢者 64〜74歳]
Fujiyoshi A et al : Blood pressure categories and long-term risk of cardiovascular disease according to age group in Japanese men and women Hypertens Res,35, 9,947-953, 2012
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22739419/
この研究は日本人67,309人(40-89歳)を対象として、平均10.2年を追跡して明らかになった信頼できるデータです。脳心血管病による死亡を予防するためには血圧を正常に保つ重要性を明らかにしました。驚くべきことに、血圧を正常に保ていたならば予防できた脳心血管病による死亡は、中年では60.9%、前期高齢者では49.3%です。
脳血管性認知症のリスクも増大
高血圧により動脈硬化が進むと脳の小さな動脈の梗塞(ラクナ梗塞)を引き起こし、気づかないうちに小さな脳梗塞が多発していきます。そして、脳血管性認知症を引き起こすリスクを格段に上げることが判明しています。下の図を御覧ください。
血圧が正常な方が血管性認知症を発症する確率を1.0とすると、高血圧前症は中年期で2.4倍、老年期は3.2倍、ステージ1の中年期は5.9倍、老年期は4.7倍、ステージ2は中年期は10.1倍、老年期は7.3倍と血圧が高ければ高いほど、血管性認知症を発症しやすいという結果が出ています。(神経変性疾患であるアルツハイマー型認知症のリスクは高血圧の有無では変わりません)
参考: 久山町研究から見た認知症の予防
他にも高血圧は動脈硬化の主原因でもあり、腎臓病、眼底出血、大動脈瘤・解離などの多臓器障害を引き起こします。
血圧が原因で命を落とす、または後遺症・合併症で苦しむ人を一人でも減らすために高血圧治療は行います。
高血圧の治療について
- 家庭血圧の測定
- 生活習慣の是正
- 薬物治療
治療に必要なステップは主にこの3つです。定期的に診察と血液検査を行いながら、目標血圧をクリアできているかを確認していきます。
治療に必要な検査
血液検査
高血圧の原因は本態性高血圧症といって体質によるものが9割以上と言われます。その他、高血圧の原因となる内分泌疾患検索や、その他の合併症の評価のため治療に際して定期的な血液検査を行います。
血管年齢、心電図測定
1年に1回の頻度で、血管年齢(脈波検査)・心電図測定を行います。脈波検査では、高血圧によって動脈硬化が進行し、足の血管が詰まっていないかを確認することが可能です。
血圧を下げるとどんなメリットがある?
なぜ血圧を下げる必要があるのでしょうか?
実際に降圧薬によって血圧が下がるとどれくらいリスクが減るのか下図を御覧ください。
降圧薬等で収縮期血圧が10下がるだけで、脳心血管病の相対リスクが大幅減少します。これは減量や降圧薬1剤でも十分に達成可能な数字です。
まずは生活習慣の是正から
高血圧と診断されたら治療が必要です。しかし、高血圧があるからといって、全ての方が薬物治療を始めるわけではありません。特に中年の方は肥満症の合併が多いので、生活習慣の改善(減塩、減量、運動、節酒)で降圧が期待できます。生活習慣を改善した場合どれぐらい降圧するのでしょうか?それを示したグラフがコチラになります。
減塩、減量、運動、節酒によってそれぞれ、4〜6 mmHgの降圧が期待できます。それぞれを組み合わせれば降圧剤1剤もしくはそれ以上の降圧効果が期待できるため、薬剤が不要になる可能性を秘めています。
体重が1kg減ると血圧も1下がる
科学的なデータよると、体重1.0 kg減少につき、収縮期血圧が約1.1 mmHg 下がると推定されます。これに基づくと10kg 減量すると収縮期血圧で11mmHgの降圧が期待できます。これは降圧剤1剤もしくはそれ以上の効果に相当します。若い時のスタイルをイメージして減量しましょう!
NeterJE,et al. Influence of weight reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12975389/
薬物治療について
生活習慣の修正による降圧は時間がかかりますし、目標血圧まで下がらないこともよくあります。また加齢によっても動脈硬化は進行し、非薬物治療のみでの降圧は困難になっていきます。そのため生活習慣の修正と並行して、若いうちからの薬物治療を検討しましょう。
薬の種類
血圧の薬には様々な機序をもつものがあります。薬物治療の基本は、機序の異なる薬剤を組み合わせながら目標血圧を目指して調整していきます。
一生飲み続ける?副作用は?
目標血圧を維持するためには、飲み続けることが基本となります。しかし、血圧のコントロールが良ければ減量や中止を試みることもあります。
薬物治療と聞くと皆さん副作用を心配されます。全ての薬には副作用がありますが、頻度は稀で、ほとんどは中止をすれば改善します。高血圧の合併症は重篤なものが多く、副作用よりも遥かに危険です。合併症は死亡に至らずともその後の生活の質(QOL)が大きく下がります。
医師がフォローを行いながら薬剤の中断、変更等を行いますので、安心して治療を行いましょう。
それではどのような人に薬物治療を行うのかを解説していきます。
リスク評価とフローチャート
リスクや血圧の大小によっては積極的に薬物治療を開始します。リスクが高い人は若いうちから降圧治療を行いましょう。特に上の血圧が160を超えている場合は、早急な薬物治療を推奨します。
目標血圧は130/80mmHg未満
地道ではありますが、医師とコミュニケーションを取りながら高血圧が適切にコントロールできていること、合併症が出ていないことを毎回の診察で確認することが大切です。
様子を見て良い高血圧はありません。一度当院にご相談ください。
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高血圧について詳しく知りたい方はコチラを参照ください。
2023.03.19
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