若いときにはすぐねれていたのに最近寝付きが悪い、在宅ワークが多くなって昼夜逆転気味、眠りが浅くて途中で目が冷めてしまう、このような悩みはありませんか?
その悩み、現代人に多い不眠症かもしれません。
このページでは不眠症について、その原因、治し方、生活習慣の改善方法、治療薬について記載します。
不眠症とは
不眠症とは、寝付きが悪い、何度も目が覚める、朝早く目が覚める、眠りが浅いなどの症状が続き、日中の活動に支障が出る状態を指します。日本人成人の20%が慢性的な不眠(※1)に悩まされています。不眠で悩む人の割合は、加齢に伴って増加します。これは加齢により必要な睡眠時間が短くなることとが関係していると考えられ、女性に比較的に多いとされます。
※1 参考: https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/dyssomnia/
現代人は睡眠不足になりやすい
5年毎の国民生活時間調査によると、1960年では平均睡眠時間が8時間13分だったのが、2020年には7時間12分と1時間短縮しています。就寝時間も1960年では平日22時に就寝している人が66%いましたが、2005年には24%に減少しています。しかし、人間が必要とする睡眠時間は変わりません。22時以降も電気が灯り、就寝時間が遅くなり1時間以上も睡眠時間が短縮いしている現代人にとって不眠はよくある悩みになっています。
不眠症の原因
不眠の原因は多岐にわたります。ストレス、アルコール、睡眠習慣の乱れ、薬剤の影響などが代表的です。
うつ病が隠れている場合があります
近年、うつ病にかかる人が増えています。単なる不眠だと思っていたら実はうつ病だったというケースも少なくありません。
不眠症の症状
不眠症の症状として、①床に入ってもなかなか寝つけない(入眠困難)、②夜中に何度も目を覚ます(中途覚醒)、③朝早く目が覚めて再度寝付けない(早朝覚醒)、④ぐっすり眠った感じが得られない(熟眠障害)の4つが良く見られます。これらの症状が全て揃うことは少なく、年齢によって出現率は異なります。入眠障害が不眠症に最も多い症状で、布団に入って入眠するまでに、30分から1時間以上かかり、それを苦痛に感じる状態です。不安や緊張が強いときに起こりやすい傾向にあります。また、中途覚醒や早朝覚醒は中高年によく見られる傾向にあり、加齢による睡眠を維持する力が低下することに由来します。
不眠症の治し方、睡眠習慣について
良質な睡眠習慣ためのルール
不眠症の改善には、生活リズムや睡眠の環境を整え、興奮や不安、緊張を取り除きストレスが少ない生活を送ることが大切です。
定期的な運動をしましょう
デスクワークや事務作業の仕事が増えた現代、そもそもの運動量が足りていません。運動習慣がない人々に不眠の傾向があることがわかっています。適度な有酸素運動がおすすめです。
個人にあった睡眠のリズムを把握しよう
睡眠のリズムで大切なのは、毎朝同じ時刻に起きることです。朝起きたら太陽の光を浴びましょう。よく寝付けないと睡眠時間が短くなると焦ってしまいますが、睡眠時間にこだわりすぎないようにしましょう。大切なのは睡眠時間ではなく、日中に眠気が残らないことです。その日の活動量が少なければ、必要な睡眠時間も短くなります。また睡眠時間には、個人差があり、年齢を重ねるにつれ睡眠時間は短くなります。25歳時の平均睡眠時間は7時間に対し、65歳時では6時間程度まで短縮されるといわれております。また、昼寝は集中力の改善に有効ですが、短時間(20分程度)にとどめ、午後3時以降に眠るのは夜の睡眠の妨げになるので控えましょう。
眠れなかったら起きる。眠くなるまで起きていよう
眠れない日々が続くと「また今夜も眠れないのではないか」と不安になり、と焦れば焦るほど目が冴えてしまう。不眠症の方が共通して経験する不安です。そのようなときは、「いつかは眠くなるのだから、眠くなるまで起きていよう」くらいに考えたほうがいい結果になる場合があります。実際、「眠れないのに我慢して無理に寝床にいる」と、不眠が悪化することが分かっています。常識的な範囲内で寝床の中で休む時間を決めておき、眠れなければベッドから出ること、前日の睡眠状態にかかわらず日中はなるべく活動的に過ごすことが大切です。
眠るための飲酒は逆効果
就寝前の飲酒はやめましょう。アルコールを飲むと一時的に寝付きは良くなりますが、夜中に目が冷めやすくなり浅い眠りになっていまします。
カフェインは18時以降摂取しない
就寝の5時間前からはカフェインの入った飲料や食べ物(コーヒー、日本茶、紅茶、コーラ、エナジードリンク、チョコレートなど)を摂取しないようにしましょう。代謝のことを考えると18時以降は摂取を推奨しません。
就寝前の喫煙をしない
ニコチンには神経刺激作用があります。夜は喫煙を避けましょう。
- 運動が足りていない!意識的に運動しよう
- 眠れなかったら、眠くなるまで起きていよう
- 睡眠時間を気にしすぎないようにしよう
- 毎朝同じ時間に起きよう
- 起きたら太陽の光を浴びよう
- 昼寝は30分以内に留め、午後3時以降の昼寝は控えよう
- 寝るためにお酒を飲まない
- 18時以降はカフェインを控えよう
- 就寝前の喫煙は控えよう
参考URL: 睡眠と健康 e-ヘルスネット 厚生労働省
不眠症を治すための睡眠習慣、いかがでしたか?まずは睡眠習慣を見直してください。
高齢者の睡眠時間は減少する
加齢に伴い必要な睡眠時間は減少します。高齢者の場合、特にストレスフルな出来事がなくても睡眠時間が短縮し、早く目が覚めることがあります。睡眠時間にこだわらず、早く起きても眠気がなければ活動を開始しましょう。日中に眠気が強く支障が出る場合は、ご相談ください。
治療の中心は薬物治療
まずは睡眠習慣の改善といっても、、ストレスが仕事、家族、環境に由来する場合などは、不眠の原因を取り除くことが難しい場合もあります。そのような方に、良い適応なのが睡眠薬です。いまや、不眠症の治療の中心は薬剤治療です。一昔前の不眠症治療は、依存性のリスクがある薬が頻用され、睡眠薬の使用のハードルは高い状態でした。しかし、後述するデエビゴに代表されるような依存性が極めて低い睡眠薬も開発されており、睡眠薬の使用のハードルはかなり低くなったと考えています。内科でも管理が行えるような薬物治療に焦点を当てて記載していきます。
睡眠薬の種類・作用
睡眠薬は以下の2パターンに大別されます
- 自然な眠気を誘発するもの
- 脳の機能を低下させるもの
内科で処方機会の多く、入眠障害に効果が期待できる薬剤として「デエビゴ」もしくは、「ルネスタ」がおすすめしています。デエビゴが自然な眠りを誘発するタイプの睡眠薬で、ルネスタは脳の機能を低下させるタイプの睡眠薬です。初めて処方するのはどちらか1剤になります。
これらの薬剤についてそれぞれ簡単に解説します。
デエビゴ(一般名: レンボレキサント)
自然な眠気を増強して入眠障害、中途覚醒を改善
デエビゴは覚醒ホルモンである「オレキシン」の脳内受容体をブロックする薬で、睡眠覚醒リズムを整え自然な入眠と睡眠維持、覚醒をもたらします。
デエビゴは入眠障害、中途覚醒のいずれかまたその両方を伴う方に使用します。
効果は即効性あり、服用後30分ほどで効果を実感
デエビゴは服用後30分ほどで眠気が強まってきます。睡眠薬に共通して言えることですが、眠れる準備をしてから服用し、服用後はすみやかに床につくようにしましょう。
空腹時の服用する必要があり
空腹時では1時間ほどで血中濃度のピークに達しますが、食後投与の場合、血中濃度のピークに達する時間が3時間に遅延することがわかっています。空腹時に服用するように心がけましょう。
引用:https://faq-medical.eisai.jp/faq/show/15096?category_id=164&site_domain=faq
デエビゴの副作用
デエビゴの副作用として、以下の3つが代表的です
- 悪夢
- 睡眠麻痺(いわゆる、金縛り)
- 眠気が残る
覚醒の維持ホルモンをブロックして眠気を誘発するので、悪夢(1.4%)や金縛り(1.6%)のような副作用が出現することがあります。また朝、眠気が残ることがあります。受容体をブロックするという薬の機序から、デエビゴの効果・副作用の程度には個人差があります。
デエビゴの用量は3規格
用量は2.5mg、5mg、10mgの3つあり、調節しやすいのも特徴です。当院の方針として、最小用量の2.5mgから開始します。(添付文書上は、5mgから開始し適宜増減しますが、眠気が残ることが多いので、最小用量の規格から処方する方針です)
依存性がないので頓用可能
後述するルネスタと違い、自然な眠気を強くする薬ですので、依存性が極めて生じにくい薬です。眠気が生じた日はデエビゴを使用せず床につくなど、常用を避ける形での使用(頓用)でも続けられます。
入眠作用が不十分な場合
デエビゴの用量を5mg、10mgと調整していきます。デエビゴは自然な眠りを誘発する薬です。デエビゴを増量しても、入眠障害が改善しない人は、次に紹介する、ルネスタを使用します。
(既にベンゾジアゼピン系の睡眠薬を常用している人などは、デエビゴの入眠作用ではカバーできないケースが多いように感じます。)
ルネスタ(一般名: エスゾピクロン)
効きが速い、残らない
ルネスタは、非ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬です。脳の機能を抑えるタイプの睡眠薬ですが、入眠作用の発現が早く、作用時間が短いことが特徴です。
入眠障害に良い適応
その効きの速さ、切れの速さから入眠障害に使用される睡眠薬になります。作用時間が短いことから中途覚醒や早朝覚醒に効果が期待できない可能性があります。
ルネスタの規格は3規格
用量は1mg,2mg,3mgの3規格あり、調節しやすいのも特徴です。当院の方針として、最小用量の1mgから開始します。
依存性に注意が必要
従来のベンゾジアゼピン系の睡眠薬(特に作用時間の短いのハルシオン、デパス、レンドルミンなど)と比べ、非ベンゾジアゼピン系であるルネスタ(一般名:エスゾピクロン)は筋弛緩作用が少なく耐性がつきにくいため依存性が抑えられています。しかし、キレが良いお薬でその使用感から漠然と使用を続けると次第に必要量が多くなり、やめられなくなる可能性があります。また反跳性不眠と言って急に中断するとかえって眠れなくなることがあります。
空腹時に服用し服用後は速やかに就寝
食後だと効果が減弱してしまうため、空腹時に服用する必要があります。効きが速いことと、副作用として健忘(記憶を無くす)があるため、就寝直前に服用します。
お酒との併用は避けましょう
アルコールとルネスタの作用は似ているところがあり、どちらも脳の機能を抑制してしまう作用があり、作用が増強する恐れがあります。また、健忘やせん妄のリスクが上がり、依存性のリスクも上がってしまいます。アルコールとルネスタとの併用は極力避けましょう。
メンタルからくる不眠には漢方薬
メンタル(不安、イライラ、倦怠感、神経症)からくる不眠の方は、漢方薬をご検討ください。中には漢方特有の著効する方がいらっしゃいます。
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2022.12.04
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