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インフルエンザ検査を受ける最適なタイミングは?検査感度、特性、解釈について

インフルエンザ検査として、抗原抗体反応を利用したイムノクロマト法によるインフルエンザ迅速抗原検査があります。この検査は簡便で迅速である一方、本当に罹患している人に検査をしても陰性と出てしまう、偽陰性の可能性が一定数があるため、結果の解釈には注意が必要です。

このページでは、インフルエンザ検査の性質を理解した上で、いつ検査を受けるべきか、その正確性、結果の解釈について簡単に説明します。

※この記事では、一般の方向けになるべくわかりやすく記載しますので、一部正確性に欠ける表現がございます。予めご了承ください。

このページでは、次の報告の内容を参考とし、図を引用・改変しております。URL:「発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に 与える影響:前向き観察研究

いつインフル検査すべき?

インフルエンザ抗原検査は、「発症から時間が経過し、インフル様の症状があったほうが感度が高い」という特性があります。したがって、偽陰性(インフルエンザに感染してても陰性と出てしまうこと)の可能性を減らすためには発症から時間を置いたほうが良い一方、タミフルなどの抗ウイルス薬は発症から投与が速いほうが有効です。いつすべきかには明確な正解はないものの、私が考える検査のタイミングを次項で説明します。

感度が高いタイミング

感度というのは「本当にその病気の人に陽性判定を下して拾い上げる確率」です。以下は、時間経過別感度をまとめた図表です。

この図表を踏まえ、ざっくりと検査のタイミング(感度が高いタイミング)をお伝えします。

検査のタイミング

①風邪症状がまだそろっていない(関節痛、倦怠感のみなど)場合
→発症から24時間以上経過したタイミング
②インフル様の症状(発熱、咽頭痛、咳)がある、または感染が濃厚な場合
→早めの検査がベスト

①について、症状が乏しい ≒ ウイルス量が少ない状況では感度が低い(感度 38.9%)ため、拾い上げる確率(感度)を上げるために約24時間待つと20〜30%確率が上がります。②については、こちらも時間が経過すると感度は上昇しますが統計学的に有意な差ではありませんので待つ必要性は乏しいでしょう。

偽陰性の可能性を常に考慮する

抗原検査での陰性結果は常に偽陰性(本当にインフルエンザに感染してても検査上陰性と出てしまうこと)を考慮する必要があります。上の図表を偽陰性についてフォーカスすると

  • 症状がまだ乏しくて、発症から間もなければ、約60%の人が陰性になってしまう(偽陰性)
  • 症状が強くて、時間が経過したベストタイミングでも約25%の人は陰性と出てしまう

ということになります。すなわち、抗原検査の検出感度には限度があり、いつ検査しても25〜60%偽陰性があるということを理解しましょう。

早めの診断・治療が効果的です

しかし、治療薬(タミフル)などは、発症から早いほうが効果的ですので、ベストタイミングになるのを無理に待つ必要はございません発症(発熱)してすぐ検査しても陽性になる人も多数いらっしゃるので、インフルエンザかも?と思ったら動けるうちに検査を受けましょう。後述しますが、特に、37.8℃以上の発熱、咽頭痛または咳の症状があるひとは、発症からの経過時間に関わらず検査しても感度に差がないと言われています。仮にベストタイミングで検査したとしても、偽陰性は4人に1人(感度 約75%)あるため、陰性であってもインフルエンザの可能性はあります。検査結果は絶対ではありません。陰性であっても、インフルエンザ患者との濃厚な接触状況があれば「みなし陽性」として診断し、治療開始することも可能です。早めに受診し医師とご相談ください。

【感染が濃厚な状況例】

  • 「家族にインフルエンザの人がいて、本人も少し遅れて風邪症状が出てきた」
  • 「職場の隣の席の人が、2日前から激しい咳をしており、昨日インフルエンザと診断された。今日から患者本人も発熱、風邪症状が出現してきた」

これ以降の記載は、興味がある方のみ読まれてください。

インフルの検査について

検査の特性まとめ

検査特性の要約から申し上げます。

  • インフルエンザ抗原検査で感染者が陽性となるのは2人に1人(感度 54.3%)
  • 発症から24時間以上経過すると感度が20〜30%上昇する
  • 発症してから時間が経過するほど陽性の確率が上がる(48h以上 だと感度約70%)
  • 発熱・風邪症状が強いほど陽性の確率が上がる

裏返して、陰性の観点から行くと、

  • 感染していても検査結果が陰性の人(偽陰性)は2人に1人いる
  • 検査タイミングが早い(目安として発症24時間未満)と偽陰性の可能性は上がる(感度 38.9%)
  • 発症から24時間以上経過すると偽陰性の確率は減る
  • 発症してから時間が経過するほど偽陰性の確率は減る
  • 発熱・風邪症状が強く、24-48hの時点での陰性はある程度信頼できる

陽性結果の解釈

抗原検査で陽性であれば、100% インフルエンザです(特異度 100%)。これは簡単ですね。

陰性結果の解釈

難しいのは陰性の結果の解釈です。陰性であっても、インフルエンザは否定できません。

感度・特異度について

その前に、すでに何度かでている感度・特異度について触れます。

感度とは、その疾患に有している人たちが、検査陽性になる確率(真陽性率)です。

特異度は、その疾患を有していない人たちが、検査陰性になる確率(真陰性率)です。

インフル抗原検査の感度

感度が高ければ、病気の人を検出する力が高いのですが、実は、インフルエンザの検査は感度が50−60%なのです。本当にインフルの人が10人いたとして、検査で陽性となるのは5−6人です。すなわち、10人中4−5人は偽陰性なので、陰性だからといってインフルエンザは否定できません

陽性となるには一定のウイルス量が必要

これは抗原検査の特性に由来します。インフルエンザ迅速抗原検査は 6log10コピー/mL とウイルス量の検出限界があり、検出性能は検体中のウイルス量に影響を受けます。つまり、インフルエンザウイルスがいたとしても、その量が少なければ検出できない(陰性)となってしまいます。風邪のウイルスは発症してから2〜3日で症状の出揃いピークを迎えます。すなわち、「ウイルス量が多い人は、症状が強く・発症から時間が経過している人」となります。これは後述するデータでも示されています。

検査感度は54.3%、時間経過によって上昇

こちらの報告によると、全体の感度は54.3%で時間経過によって、感度上昇が認められています。

全体で54.3%(95%信頼区間(CI):45.3~63.1),特異度は100%(95%CI:98.0~100)だった(Table2-A).感度はインフルエンザ様症状の発症時から,インフルエンザ迅速抗原検査までの時間が長いほど上昇した(p=0.03).12時間未満が38.9%(95%CI:17.3~64.3)に対し,12~24時間で40.5%(95%CI:25.6~56.7),24~48時間で65.2%(95%CI:49.8~78.6),48時間超で69.6%(95%CI:47.1~86.8)だった(Table2-A).

引用改変:「発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に 与える影響:前向き観察研究」明石 祐作ら 筑波メディカルセンター病院

インフルエンザ様の症状がでている人に限定すると時間経過は無視できる

37.8℃以上の発熱および咳または咽頭痛を認める場合をインフルエンザ様の疾患(Influenza-likeillness 以下ILI)と定義し、その人々における検査感度を調べると

ILIでは検査感度は67.9%(95%CI:56.4~78.1,Table2-C)で、時間経過に伴うインフルエンザ迅速抗原検査の感度は有意な上昇を認めませんでした。(p=0.45,Table2-C)

引用改変:「発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に 与える影響:前向き観察研究」明石 祐作ら 筑波メディカルセンター病院

発熱、咳、咽頭痛を認める場合は、発症時間から検査までの時間経過における感度の差は無いので、症状が揃えばいつ検査してもOKと解釈できます。実際の傾向としては、時間経過によって検査感度は上がってはいます。

これらを踏まえて、冒頭の検査のベストタイミングをざっくりとお伝えしました。正しく理解しようと思うと難しいですが、検査の特性を理解し、大筋を理解するのは易しいはずです。インフルエンザ検査を受ける際の一助になれば幸いです。