当院ではマジンドール(販売名:サノレックス)の処方はいたしておりませんが、患者さんからご相談を受けることがありますので、記事を作成します。
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- 保険適応は高度肥満症の人に限定されます
- 依存性や副作用の問題から現代では使用されなくなった薬です
- 副作用の割にはダイエット効果もさほど期待できません
- 肥満がない方のダイエット目的での使用は推奨できません
サノレックスとは
食欲抑制作用のある薬
サノレックス(一般名:マジンドール)は1992年に承認をされた薬で、日本国内で肥満症に適応がある薬剤です。食欲抑制作用があり、体重減少作用が確認されています。
かつては唯一の肥満症の承認薬だった
これまで日本では肥満症の適応承認を得た医薬品はサノレックス(一般名:マジンドール)しかありませんでした(漢方薬を除く)。しかし、副作用や安全性、効果の理由から現代では使用されるケースはほとんどありませんでした。一般的なそして、2023年にウゴービ(一般名セマグルチド)の承認されたことで、肥満症に対して保険適応となる
サノレックスの保険適応、作用、機序について
保険適応は高度肥満症の方に限られる
高度肥満症(BMIが35以上)の患者で、食事療法及び運動療法の効果が不十分な場合に補助療法として保険適応となります。BMI35以上は肥満度でも外科手術が適応になる一番上のレベルです。
BMI35の目安を提示します。
- 160cmの方であれば約90kg
- 165cmであれば95kg
- 170cmであれば101kg
- 175cmであれば107kg
これぐらいの身長・体重がBMI35です。
肥満がある方でも上記の適応を満たした方でないと保険適応でとなりません。(処方できません)
作用・機序
視床下部に作用して食欲を抑制する薬剤です。弱いノルアドレナリン放出作用とノルアドレナリン・アドレナリンの取り込み抑制作用により脳内のカテコラミン濃度を増加させることが作用機序と考えられています。覚醒剤と一部作用機序が類似していることからか、安全性と依存性が問題となり、現代では処方機会は無くなりました。
服用方法
1日1回昼食前に 0.5mg(1錠)を経口投与します。最高投与量は1.5mg(3錠)までとし、2〜3回に分けで食前に経口投与できますが、できる限り最小有効量を用います。
不眠につながる恐れがあるため夕方以降の服用は避け、投与中は自動車などの運転等危険を伴う機器の操作には従事できません。
効果・効能
食欲を抑制する作用により、数kgの体重減少作用が報告されておりますが、その効果の程度も著明な効果とは言い難い、微妙な報告が多いです。
Treatment with mazindol showed greater short-term weight loss than that with placebo (MD -1.721 kg; p<0.05; I2: 0.9%; p=0.388).
マジンドールによる治療でプラセボによる治療よりも短期的な体重減少(-1.7kg )が大きかった(MD -1.721 kg; p<0.05; I2: 0.9%; p=0.388)とされています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5439101/
使用の日数制限について
安全性と依存性について慎重に使用する必要があり、連続の使用は最長3ヶ月以内。1回の処方は14日間の制限があります。1ヶ月内に効果を認めない場合は中止をします。
サノレックスの副作用、危険性などについて
副作用について
マジンドールは副作用が多い薬です。副作用の発現率は、21.4%であり、口渇感、便秘、悪心・嘔吐、睡眠障害、胃部不快感等が報告されています。口渇感、便秘、傾眠傾向など様々なものが高頻度に出現します。副作用が多いために、中断されることも多い薬です。
自費診療でもサノレックスの処方はいたしておりません
当院ではマジンドール(商品名: サノレックス)の処方を行っておりません。また使用自体推奨しておりません。
マジンドールは高度肥満症に適応がある薬ではありますが、日本全国のまともな医療機関で積極的に使用するところは少ないと思われます。(使用するとしても入院下で、限られた期間での使用が望ましいでしょう。)
さらに昨今では依存性や副作用の問題から使用される機会は減少しています。また体重減少の科学的実績がある薬剤が増えてきた現代ではあえてサノレックス(マジンドール)を処方する意義は乏しいでしょう。海外ではセマグルチドを始め、肥満症に適応のある薬剤が他にもございます。
承認された薬だから安全とは限らない
承認薬 =安全な薬とは限りません。日本国内で流通している医薬品はすべて厚生労働省の承認を経ている薬です。多くの自由診療クリニックは、『あの厚生労働省が承認した』という事実を出して、さも安全のような印象を与えます。医薬品は適応や効果効能・副作用は様々です。承認されて使用されたお薬であっても、後に副作用や問題点が明らかとなって使用されなくなる薬があります。マジンドールがその一つです。しかし依存性や副作用が問題となる薬剤にもかかわらず、診察もなしに処方する自由診療クリニックが散見されます。サプリのように無診察で処方するところもあるようです。
禁忌
1)本剤の成分に過敏症の既往歴
2)緑内障(眼内圧が上昇)
3)重症の心障害(症状悪化)
4)重症の膵障害(インスリン分泌抑制作用を有する)
5)重症の腎・肝障害(代謝又は排泄が遅延)
6)重症高血圧症(カテコラミンの昇圧作用を増強)
7)不安・異常興奮状態(中枢興奮作用を有するので興奮状態を増悪)
8)薬物・アルコール乱用歴(一般に依存性,乱用が起こりやすい)
9)精神分裂病(外国で高用量で精神分裂病の症状悪化の報告)
10)MAO阻害薬投与中又は投与中止後2週間以内の患者(相互作用参照)
11)妊婦又は妊娠の可能性
12)小児
以上でサノレックスの紹介は終わります。
当院のメディカルダイエットでは、安全性を考慮し効果のあるダイエットを追求しています。
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