インスリン注射は注射手技だけでなく、製剤の保管・廃棄方法、自己血糖測定など覚えることがたくさんあります。このページではインスリン製剤の保管・廃棄方法について解説します。
インスリン製剤の保管について
インスリンはペプチドホルモン(タンパク質の仲間)ですので熱や直射日光、温度の変化に弱いです。保管方法に問題があると、カートリッジの中のインスリンが分解されてしまい、作用のない注射をしていた…という非常事態が起こり得ます。このような悲劇にならぬよう正しく保管しましょう!(※1型の患者さんはインスリンが失活してしまった製剤を気づかずに注射を続けてしまうと死活問題になります。)
開封前 〜冷蔵庫の扉側〜
未使用のインスリンは2℃~8℃で保管することになっています。未使用のインスリン製剤は冷蔵庫で保管しましょう。冷蔵庫の保管場所によっては冷気が直接あたり、凍結をしてしまうこともありますので、冷蔵庫の中でも場所を考えましょう。扉側に保管するのがおすすめです。どうしても送風口に近くなる場合は、冷風がインスリンに直接当たらないように箱のまま保存し、何かで包んだほうが良いでしょう。
開封後 〜30℃以下の室温〜
開封後は
- 直射日光が当たるところ
- 冷蔵庫
- 高温になるところ
上記のような場所をさけ、30℃以下の室温で保管をお願いします。
未使用は冷蔵庫。凍結するような場所は避けましょう。使用中のインスリンは30℃以下の室温で保存。直射日光・高温を避けましょう。
その他-保管-
針をつけたまま保管するのはおやめください。また子どもの手の届くところにインスリン・針を放置しないでください。
飛行機でのインスリン製剤、注射針の持ち込みについて
インスリン製剤は機内に持ち込む必要があります。貨物室だと凍結の恐れがあるからです。機内で注射の必要がある場合は、注射針も必要分+αを機内に持ち込みお願いします。医学的に必要なものですので本来鋭利なものである針は機内持ち込み不可能ですが、長時間のフライトや機内食などどうしても必要な場合がありますので、準備を行えば許可はもらえるはずです。
JAL、ANAでは機内持ち込みの事項を明記されています。
JALでは「航空会社として診断書は不要、必要分のみ機内に持ち込みください」
ANA「インスリン注射・エピペンなどの自己注射器や、医師から処方された在宅自己注射薬剤を投与するために使用する自己使用注射等の針については機内へお持ち込みご使用いただけます。事前申告や医師の診断書のご提示は必要ありません。保安検査の際に自己注射器であることをお知らせください。空港の保安検査をスムーズに通過していただくため、内容を明示できるもの(処方箋や主治医の証明書、糖尿病患者用IDカードなど)を携帯されることをおすすめいたします。」
ただし、海外空港においては各国により基準が異なる場合があり、関係機関に確認する必要があります。
日本糖尿病協会が発行している「DiabeticDataBook」や「IDカードアプリ」の活用を検討ください。航空会社の規定によっては「英文の診断書」を求められる場合があるかもしれません、確認の上主治医に発行を依頼されてください。
参考リンク:日本糖尿病協会 Diabetic DataBookリンク
参考リンク:JAL 「糖尿病ですが、機内にインスリンと注射器を持ち込めますか。」
参考リンク:ANA インスリンポンプ・自己使用注射器(針)等を使用されているお客様
注射針の廃棄について
注射針をはじめとした自己注射に関わる物品は在宅医療廃棄物となります。針先で怪我する可能性があることや、血液が付着したりするため適切に処理する必要がある医療廃棄物です。特に注射針をはじめとした鋭利なものは廃棄に十分注意が必要です。
この廃棄方法は自治体によってばらつきがあり、一般ごみとして処理できる自治体もありますが、まだ一般的ではない印象です。個人の経験的には処方をした医療機関で回収することが多い印象です。処方を受けた医療機関に確認してみましょう。(注射薬を調剤してもらっている調剤薬局でも対応可能な場合があります)
なないろクリニックでは処方した在宅自己注射の注射針を回収しています。
詳しくは、日本糖尿病協会が発行している「正しく捨ててる?在宅医療廃棄物」を参照ください。
針捨てにペットボトル活用
針は固い容器に入れた上で医療機関に持っていきます。毎日自己注射や、血糖測定を行っていると相当な数の使用済みの針が排出されます。それを固い容器にまとめて持って行くのも大変です。固い容器として、本来は専用の針捨てBOXが推奨されますが、代用としてペットボトルを針捨てBOXとして使用することもあります。(※ いろはすのような柔らかいペットボトルは不適切)
容器に関しては、医療機関によって準備や案内があると思いますので、指示に従われてください。