インスリンを初めて自己注射する人へ向けたページです。
慣れるまでは難しいかもしれませんが、自己注射はすぐに慣れます。確認しながら行っていきましょう!
インスリン製剤には様々な種類がありますが、どの製剤も基本的に同様の流れです。
注射前の準備
注射に入る前に以下の準備をしましょう。
- 石鹸で手指をよく洗う(感染予防)
- 製剤の種類を確認(2種類以上ある人)
- 必要な物品を確認
- 製剤の状態の確認
手を洗って手指を清潔にして、注射製剤、注射針、アルコール綿の3点を準備します。今から打つ薬が正しい製剤か確認し、指示単位とカートリッジの残量も確認しましょう。
注射の手順
準備ができたら注射に移ります。注射の手順は大きく分けて
- 注射針の取り付け
- 空打ち
- 注射
- 片付け
があります。
注射針の取り付け
手順は以下のとおりです。
準備の過程では「注射針をケースごとまっすぐ押し当てて止まるまで回す、針ケースをまっすぐ引き抜く」ことがポイントです。
それぞれ見ていきましょう。
まっすぐに針をさし回しながら取り付ける
まっすぐに針を装着できないと針が曲がってしまい、インスリンの出が悪くなる、またはインスリンの薬液が出ないことが起こり得ます。もし装着時に抵抗がある場合など「まっすぐ」取り付けられなかったかも?と思うときは無理にねじ込まず新しい注射針に交換しましょう。
キャップをまっすぐ引き抜く
カートリッジと注射針をまっすぐに取り付けることができたら、次にキャップをまっすぐ引き抜きましょう。今度は体に注射する針が露出します。もしうまく引き抜けず針が曲がったり、折れたりした場合は新しい注射針に交換しましょう。
空打ち
注射の前に必ず空打ちを行います。空打ちは「2単位」に合わせ、注射針を上に向けて注入ボタンを押し、インスリンが出るのを確認します。
ランタスXR の空打ちは3単位です
GLP-1アナログのオゼンピックは2回目以降空打ち不要です
空打ちでスムーズに薬液が針先から出ることを確認できたら、実際の注射に移ります。
注射の手順
注射部位の確認
主な注射部位には腹部、臀部、大腿がありますが、なないろクリニックでは吸収の安定性から腹部への注射を推奨しています。
注射は最後で気を抜かない
指示単位にダイアルを合わせた後、注射部位を広めにアルコール綿で消毒し、皮下注します。単位表示窓が「0」に戻るまで完全に押し込み、そのまま5秒以上待ちましょう。注入ボタンを押し込んだまま、皮膚から針を抜きます。単位数が多くなればなるほど、カートリッジ内のピストンを押し込む距離も多くなりますので「0」に戻るまでに力を要します。
片付け
注射が終わりましたら、注射針を外して次回の注射に備えて保管しましょう。注射針を外すときは装着する時に使用した「針ケース」をかぶせて、逆向きにくるくる回して外します。(針キャップは不要)
カートリッジが露出しないようしっかりとキャップを装着し、高温や直射日光を避けた30℃以下の室温のところで保管しましょう。
保管と廃棄方法について
インスリンはホルモンですので熱や直射日光、温度の変化に弱いです。保管方法に問題があると、カートリッジの中のインスリンが分解されてしまい、作用のない注射をしていた…という事態が起こり得ます。このような悲劇にならぬよう正しく保管しましょう!
未使用のインスリン製剤は冷蔵庫で保管、開封後は30℃以下の室温で保管します。使用済みの注射針等は厚いペットボトルなどの容器にいれて針が露出しないようにした状態で医療機関もしくは調剤薬局に持っていき廃棄を依頼しましょう。
自己注射の理解を深めるために
【準備】製剤の種類を確認するべき人
これはインスリン頻回注射療法(Multiple Daily Injection:MDI)という、2種類以上のインスリン注射製剤を打ち分けている人が対象です。
1日1回の基礎インスリン注射やGLP-1アナログの注射など1種類のみの人は読み飛ばしてOKです。
慣れてくると注射前に製剤確認を怠ってしまいます。そうすると以下のように、誤った製剤を注射してしまう事故が起きてしまいます。
- 食事用インスリンを打つはずのところを、持効型インスリンを打ってしまった
- 持効型インスリンを打つはずのところを、食事用インスリンを打ってしまった
持効型インスリンと食事用インスリンではたとえ同じ単位でも吸収の速度が全く異なり、低血糖のリスクがありますので大変危険です。こういった打ち間違いを防ぐために注射前に必ず製剤と注射単位を確認しましょう。
声に出して「よしっ」と指差し確認しましょう。
【注射】なぜ空打ちが必要?
なぜ空打ちが必要なのでしょうか?次のような理由があります。
- インスリンカートリッジの中の空気を抜き、注射針を薬液で満たすため
- 注射針がきちんと装着できているか確認するため
空打ちをしないと正しい量が投与できない
空打ちの次に、医師から指示された単位を設定し皮下注射をしますが、空打ちをしないと指示単位が正しく投与できません。ダイアルで設定する注入量は空打ち前提で設計されています。空打ちをしない場合、注射針の内腔分のインスリンが不足してしまうので、実際の投与量は指示量よりも少なくなり、期待される血糖降下作用が得られない可能性があります。
インスリン量を示す「単位」はとても繊細な量です。1単位は0.01mLで、1単位で血糖値を約 50mg/dL下げる作用があります(※大まかな目安です。インスリン感受性は疾患背景が大きく関わるので、1単位あたりの血糖降下作用は個人差があります。)したがって、インスリンの投与量が0.01mL減っただけでも血糖降下作用が大きく変わりますので、指示量を確実に投与できるよう必ず空打ちを行いましょう。
針が装着できているか確認
空打ちを行い、実際に薬液が排出されることで注射針が正しく装着できている確認が取れます。
【注射】注射部位を毎回変えましょう
同じ場所にインスリン注射を続けていると、皮下に柔らかいしこり(別名:インスリンボール)が生じる場合があります。
右利きの人であれば、無意識に打ちやすい右下腹部に注射を繰り返してしまします。同じインスリンの単位でも効きにくくなったりして血糖悪化の原因になりますので、注射のたびに注射部位を少しずつずらしましょう。
意識的に打つ場所を変える。お腹をカレンダーに見立てて打つのはどうでしょう?
意識的に打つ場所を変えると言っても、前回打った場所が明確にわかるわけではありません。なないろクリニックではお腹をカレンダーに見立てて注射部位を決定するやり方(カレンダー法)を提案しています。
お腹をカレンダーに見立てて横に7分割、縦に4分割(5週のときは5分割)して、注射する日に対応した場所に注射
昨日の晩ごはんも忘れてしまうのが人間です。「前どこに打ったっけな?」と思い出すストレスよりも、カレンダーにしたがって打つ場所を決定するほうが楽ですよ。カレンダー法に従えば、私のように大雑把な生活の人でも、同じ箇所に繰り返し打ってしまってインスリンの効きが悪くなってしまう…という事態を避けられることでしょう。
【注射】注射針は毎回交換しましょう
また、注射針は注射のたびに新しい注射針をつけます。インスリン注射に慣れてくると前回の注射の針を残したまま、次回の注射に流用する人が稀にいらっしゃいます。針を残したまま保管するのは危険ですし、針先が曲がり適切な量のインスリンが注入されない可能性があります。
インスリンに関しては、日本糖尿病協会のページがよくまとまっていますので、一度参照ください。
日本糖尿病協会は、糖尿病に関する知識の普及啓発、療養指導、調査研究等をその理念に掲げ、広く国民の健康増進に寄与することを目的に現在約10万人の会員を擁しています。日本糖尿病協会には、糖尿病患者とその家族、医師、看護師・栄養士・ 糖尿病療養指導士などの医療スタッフで作られた約1,600の糖尿病「友の会」があります。
また本ページでも多数引用させていただいた「インスリン自己注射ガイド」も御覧ください。