健康診断で指摘される脂質異常症は非常に相談が多い項目です。コレステロール、中性脂肪の異常は冠動脈疾患、脳血管疾患のリスクです。このページでは中性脂肪、コレステロールの異常で治療を考えている方向けに記載します。

診療の流れについて

診察

コレステロール、中性脂肪の異常値に対して様子を見て良いのか、それとも治療介入すべきかを医師が判断します。異常値の原因に食習慣や肥満症がある場合は、是正も必要です。

検査

血液検査を施行します。この検査は必須になります。医療用体組成計による肥満診断を行います。

治療

コレステロールを下げる薬、中性脂肪を下げる薬もしくはその両方を使用します。近年は合剤が開発されていますので、脂質異常症の治療薬は1〜2剤です。

なお、治療の必要性に関しては、診断とリスク評価が重要です。※全員が治療を開始するわけではございません。

中性脂肪、コレステロールが高いと言われた方へ

血中の中性脂肪、もしくはコレステロールが高い状態を「脂質異常症」と言います。中性脂肪、コレステロールの異常があると動脈硬化性疾患(アテローム性脳梗塞、冠動脈疾患)のリスクが増大することがわかっています

脂質異常症の診断基準

以下に脂質異常症の診断基準を提示します。あなたの脂質異常はどのタイプでしょうか?

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

コレステロールが高い方

LDL-コレステロールが高いとリスク3−4倍

コレステロールの中でも、重要なのはLDL-コレステロール。LDL‐ コレステロールは俗に悪玉コレステロールと呼ばれるものです。LDL-コレステロール ≧ 140 mg/dLを高LDL-コレステロール血症と定義されます。LDL-コレステロール 80 mg/dL未満と比較して、LDL-コレステロール 140 mg/dL以上の発症リスクは冠動脈疾患 2.8倍、心筋梗塞 3.8 とされます。1)

また、LDL-コレステロールが高ければ高いほど冠動脈疾患の発症リスクが高いことがわかっています。日本人において血清LDL-コレステロール 80mg/dL から200mg/dLまでの範囲でLDL-コレステロール30mg/dL 上昇するごとに男性1.3倍、女性1.25と冠動脈疾患の発症リスクとLDL-コレステロールの関係にほぼ直線的な正の相関を示すことがわかっています。1)

1) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21371493/

H Imano et al. Low-density lipoprotein cholesterol and risk of coronary heart disease among Japanese men and women: the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS)

若い人であっても冠動脈疾患の生涯リスクは高い

一生の間に冠動脈疾患を発症する確率(生涯リスク)は、男性ではLDL-コレステロール が160mg/dL 以上だと高まります。下図を御覧ください。

若い人(45歳)であっても高齢者(75歳)と同程度の高リスク(約2人に1人が冠動脈疾患)があります。当院としては、未治療の高LDL-コレステロール血症は動脈硬化性疾患のリスクを高めることは明らかですので、若い人であっても生涯リスクを考慮して治療を検討すべきと考えています。

コレステロールの治療

LDL-C(コレステロール)が基準より高いからと言って全員が薬物治療を行うわけではありませんが、1つの基準としてLDL-Cが180mg/dLを超える方は、薬物治療を行います。併存症がある方は180mg/dL未満でもそのリスクに応じてしっかりとLDL-Cを下げる必要があります。

コレステロールを下げる治療薬スタチン

LDL-コレステロールを下げる薬の一つにスタチンがあります。種類によって「○○スタチン」と薬品名は異なりますが、概ねLDL-コレステロールを40-50%下げることが可能です。そしてスタチンによってLDL-コレステロールを下げれば下げるほど冠動脈イベントの発症率が抑えられることが明らかになっています。

下図は治療薬(スタチン)で治療している方のLDL-C値と冠動脈イベントの発症率をまとめたものです。

スタチンにはプラーク退縮効果もあります

この治療薬(スタチン)は動脈硬化のプラークの退縮効果も確認されており、“血管サラサラの薬”と言っても過言ではありません。なないろクリニックでは、このスタチンという薬を中心に治療計画を立てます。1,2日飲み忘れても構いません。サプリ感覚で良いので続けることが重要です。

LDL-C(コレステロール)に関しては、The lower, the better (低ければ低いほどよい)ということが判明してきており、しっかりと治療を行うことが大切です。

中性脂肪(TG)が高い方

TG  ≧ 150mg/dL を高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)と定義され、動脈硬化、心血管疾患、肝機能障害(脂肪肝)、急性膵炎のリスクがあります。

トリグリセリド(中性脂肪)も心血管死亡リスクを高める

アメリカのFramingham study(フラミンガムスタディー)を始めとして、高TG血症は心血管疾患の独立したリスクファクターと明らかになっています。また血清TG値が150mg/dLより高くなるほど心血管死亡リスクは直線的に増加することがわかっています。(図は65歳未満のものに絞って掲載)

下の論文より引用・改変

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20200399/_article/-char/ja/

食後高トリグリセライド血症も要注意!

中性脂肪は食事の影響を受けやすいため、食後のトリグリセライドの評価は難しいとされていましたが、食後TG値が高い人では、心血管疾患の発症が明らかになり、日本人においても非空腹時のTG値でコレステロールと独立して突然死、心筋梗塞、狭心症を増加させることが明らかとなりました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/4/106_702/_pdfより引用・改変

Iso H, et al: Serum triglycerides and risk of coronary heart disease among Japanese men and women. Am J Epidemiol 153: 490―499, 2001.

高中性脂肪血症(高TG血症)の治療

中性脂肪においてもリスクを考慮して、治療を開始しますが、ひとつの目安としては中性脂肪が 500mg/dL以上の場合は急性膵炎のリスクが高くなるため、併存症がない場合であっても治療を開始します。

脂質異常症の治療の結論

「脂質異常症を放置せず、大きな病気になる前に予防しましょう!」

体質による影響もあり、生活習慣の改善だけでは治療が難しいこともしばしばあります。スタチンを始めとして有力な治療薬がありますので、お近くの信頼できる医師にご相談ください。

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脂質異常症はリスク評価が大切です。年齢や基礎疾患によっても変わりますので、異常を指摘されたら必ず医師に相談下さい!

脂質異常症の治療に前向きの方、一度やっていたのに中断した方、良いお薬がありますので、ぜひ治療を開始・継続していただけますようお願いします。

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