このページでは、脂質が高いとどうなるのか、どのような人に治療が推奨されるのか、なぜコレステロールを下げることが推奨されるのかなど、治療を始める前に伝えたいことを記載していきます!
脂質異常症とは、その種類、診断基準について
脂質異常症とは、血中のコレステロールや中性脂肪の値が異常に高くなる状態を指します。この状態が長期間続くと、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの生命やQOLに関わる疾患を引き起こすリスクが高くなります。
脂質の種類
脂質といっても多様な脂質が存在します。健康診断で異常を指摘される主な脂質は次の4つです。
- LDL-コレステロール
- HDL-コレステロール
- 中性脂肪/トリグリセライド(TG)
- Non-HDL-コレステロール
LDL-コレステロールは、Low Density Lipoprotein cholesterol:低比重リポタンパク質コレステロールの略で、肝臓で作られたコレステロールを身体全体へ運ぶ役割をもっています。血管壁に沈着しプラーク形成、動脈硬化の原因となるので、俗に悪玉コレステロールと呼ばれます。HDL-コレステロールは、Low Density Lipoprotein cholesterol:高比重リポタンパク質コレステロールの略で、余分なコレステロールを回収して動脈硬化を抑える働きがあり、俗に善玉コレステロールと呼ばれます。脂質は高いと悪いイメージを持たれますが、善玉コレステロールHDL-コレステロールだけは低い(40mg/dL未満)と異常です。
高いと異常 | 低いと異常 |
高LDLコレステロール血症 高トリグリセライド血症 高Non-HDL-コレステロール血症 |
低HDLコレステロール血症 |
脂質異常症の診断基準について
以下に脂質異常症の診断基準を提示します。あなたの脂質異常はどのタイプでしょうか?
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
健康診断などで指摘された場合はすでに基準を満たしていることがあります。基本的には一つでも当てはまった方は治療の対象です。
脂質異常症のリスクについて
中性脂肪、コレステロールの異常があると動脈硬化性疾患(アテローム性脳梗塞、冠動脈疾患)のリスクが増大することがわかっています。LDL-コレステロール ≧ 140 mg/dLを高いLDL-コレステロール血症と定義され、LDL-コレステロール 80 mg/dL未満と比較して、LDL-コレステロール 140 mg/dL以上の発症リスクは LDL-コレステロール 140 mg/dL以上の発症リスクは冠動脈疾患 2.8倍、心筋梗塞 3.8倍 とされます。1)
また、LDL-コレステロールが高ければ高いほど冠動脈疾患の発症リスクが高いことがわかっています。日本人において血清LDL-コレステロール 80mg/dL から200mg/dLまでの範囲でLDL-コレステロールが30mg/dL 上昇するごとに男性1.3倍、女性1.25倍と冠動脈疾患の発症リスクとLDL-コレステロールの関係にほぼ直線的な正の相関を示すことがわかっています。1)
LDL-コレステロールが高ければ高いほどリスクは直線的に増大する
1) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21371493/
H Imano et al. Low-density lipoprotein cholesterol and risk of coronary heart disease among Japanese men and women: the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS)
若い人であっても冠動脈疾患の生涯リスクは高い
一生の間に冠動脈疾患を発症する確率(生涯リスク)は、男性ではLDL-コレステロール が160mg/dL 以上だと高まります。下図を御覧ください。
若い人(45歳)であっても高齢者(75歳)と同程度の高リスク(約2人に1人が冠動脈疾患)があります。当院としては、未治療の高LDL-コレステロール血症は動脈硬化性疾患のリスクを高めることは明らかですので、若い人であっても生涯リスクを考慮して治療を検討すべきと考えています。
トリグリセリド(中性脂肪)のリスク
アメリカのFramingham study(フラミンガムスタディー)を始めとして、トリグリセリド(TG) ≧ 150mg/dL以上で心血管イベントリスクが上昇するため、TG ≧ 150mg/dL を高トリグリセライド血症と定義されています。冠動脈疾患の発症はLDL-C値で補正しても、TG ≧ 150mg/dLで増加することが示されており、高TG血症は心血管疾患の独立したリスクファクターと規定されています。
65歳未満において血清TG値が150mg/dLから高くなるほど心血管死亡リスクは増加することがわかっています。
中性脂肪は150mg/dLよりも高ければ高いほどリスクは直線的に増大する
下の論文より引用・改変
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20200399/_article/-char/ja/
食後高トリグリセライド血症も要注意!
中性脂肪は食事の影響を受けやすいため、食後のトリグリセライドの評価は難しいとされていましたが、食後TG値が高い人では、心血管疾患の発症が明らかになり、日本人においても非空腹時のTG値でコレステロールと独立して突然死、心筋梗塞、狭心症を増加させることが明らかとなりました。
食後だからといって、中性脂肪が高いことは見逃せない
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/4/106_702/_pdfより引用・改変
Iso H, et al: Serum triglycerides and risk of coronary heart disease among Japanese men and women. Am J Epidemiol 153: 490―499, 2001.
HDL-C は低いとリスク大
HDL-C 40 mg/dL 未満で低HDL-C 血症と定義づけられます。血清HDL-Cと循環器疾患死亡リスクの関連を検討したNIPPON DATA90の研究結果(30歳以上の男女8000人を10年追跡した研究)では、男女とも血清HDL-C値40~59mg/dLの死亡リスクを1とした時、HDL-C 35mg/dL未満で約1.5倍高く血清HDL-Cが上昇するほど循環器死亡リスクが低下する傾向を示しました。
https://shiga-publichealth.jp/nippon-data/material/2-4/ より引用改変
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15913635/
治療について
色々リスクについて記載しましたが、お伝えしたいことはひとつ。「脂質異常症を放置せず、大きな病気になる前に予防しよう!」ということなんです。
脂質異常症はリスク評価が大切です。年齢や基礎疾患によっても変わります
治療の対象について
どのような方が治療対象かなど、次の3STEPに沿って決定していきます。
STEP1 : 脂質異常症の診断(スクリーニング)
STEP2:リスク評価
STEP3:治療目標の設定
まずは診断(STEP1)です。健康診断などで指摘された場合はすでに基準を満たしていることがあります。
脂質異常症のタイプ診断
STEP1 診断: あなたの脂質異常はどのタイプ?
再度、診断基準を掲載します。LDL-C、中性脂肪、Non-HDL-Cが高いのか、はたまたHDL-Cが低いのかを確認しましょう!
こちらに該当した方は、スクリーニング陽性で治療が必要です。治療と言っても、全員が薬物療法とは限りません。境界型のみ人を含め治療の前にリスク評価(STEP2)を行います。
リスク評価
STEP2 リスク評価: フローチャート&久山町スコア
過去に動脈硬化性疾患既往や高リスクの基礎疾患がないか
まず下のフローチャートに従って過去に既往があるのか、高リスクの併存症がないかで分類します。過去に既往がある方は、二次予防(再発予防)が目的となりますので、目標も変わってきます。次に糖尿病などの高リスクの基礎疾患がないかを確認します。該当すればそれだけでも高リスクと判定されます。
上記に当てはまらなければ、「久山町スコア」を使用します。久山町スコアは10年以内の冠動脈疾患とアテローム性脳梗塞の発症確率を予測できるすごいツールです。久山町スコアを計算したら、年齢階級スコア表に従って低リスク、中リスク、高リスクの3つに分類されます。
低リスク2%未満、中リスクは2〜10%、高リスクは10%以上です。
治療の目標について
STEP3 管理目標の設定:クリアしてるかチェックしよう!
リスク評価を踏まえて、治療目標を決定します。
[脂質管理目標]
管理目標をクリアしているかどうかを定期的に血液検査で確認します。年齢や基礎疾患、既往歴によって管理目標はそれぞれなので、全てクリアをしていないとダメというわけではございません。しかし、あえて一言申し上げます!
少なくともLDL-Cだけは管理目標クリアを目指しましょう!
というのもLDL-Cに関しては
The lower, the better (低ければ低いほどよい)
ということがわかってきているからです。
脂質異常症の治療薬 スタチン
LDL-コレステロールを下げる薬の一つにスタチンがあります。種類によって「○○スタチン」と薬品名は異なりますが、概ねLDL-コレステロールを40-50%下げることが可能です。そしてスタチンによってLDL-コレステロールを下げれば下げるほど冠動脈イベントの発症率が抑えられることが明らかになっています。
下図は治療薬(スタチン)で治療している方のLDL-C値と冠動脈イベントの発症率をまとめたものです。
スタチンにはプラーク退縮効果もあります
この治療薬(スタチン)は動脈硬化のプラークの退縮効果も確認されており、“血管サラサラの薬”と言っても過言ではありません。なないろクリニックでは、このスタチンという薬を中心に治療計画を立てます。1,2日飲み忘れても構いません。サプリ感覚で良いので続けることが重要です。
いかがでしたか?コレステロール、中性脂肪の異常を指摘されたら、放置せず信頼できる医師に相談しましょう。リスク評価を行い、適切に治療を開始すれば大きな病気を予防できます。
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2022.12.04
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