糖尿病

[医師解説]マンジャロと低用量ピルの併用はできる?注意すべき理由と対策について

近年、糖尿病治療の新たな選択肢として「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」が承認され、その優れた体重減少効果から糖尿病治療のみならず、ダイエット治療のサポートとしての人気も根強いものとなってきました。女性への処方機会も増えており、その際に注目すべきは「低用量ピル(経口避妊薬OCやLEP)」との飲み合わせです。実は、低用量ピルはマンジャロと併用注意の薬剤としてが位置づけられています。低用量ピルを使用している方で、マンジャロを使用している方・今後使用を考えている方に向けて解説していきます。


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結論!マンジャロとピルは併用できる?出来ない?

結論、マンジャロとピルは併用できます。しかし、併用によって低用量ピルの効果を一時的に減弱させる可能性があるため、注意が必要です。特に避妊目的に低用量ピルを使用している人は注意と対策が必要です。

避妊目的に低用量ピルを服用している人は、マンジャロ投与中はその他の避妊対策(コンドームの使用など)を併用するようにしましょう。

なぜマンジャロと低用量ピルの併用に注意が必要なのか

マンジャロには、胃の中の食べ物をゆっくり送り出す作用(胃内容排泄遅延作用)があります。この作用によって、食べ過ぎを防止し、ダイエット効果につながります。一方で、その作用はほぼすべての経口薬の吸収を遅れる可能性があります。ほとんどの薬において吸収の遅れは大きな問題ありませんが、吸収の不安定なホルモン剤、特に低用量ピルのように用法用量を遵守すべき薬は要注意です。低用量ピルは毎日決まった時間に服用し、胃から小腸へとスムーズに運ばれて吸収されることで、血中のホルモン濃度を一定に保ち、避妊効果や月経困難症の改善効果を発揮します。(と、私は認識しています。間違っていたらごめんなさい)

実際に、低用量ピルの吸収が減弱するデータがあり、注意喚起されています。

まとめると…マンジャロの胃内容物排出遅延作用がピルの吸収を妨げ、避妊効果を低下させるリスクがあることから、マンジャロと低用量ピルは併用注意とされています。

どれくらい吸収が妨げられるのか

イーライリリーのHPに相互作用の試験データがございますので紹介します。

引用:https://medical.lilly.com/jp/answers/171801

例えば、ノルエルゲストロミンでは、Cmax(ピーク濃度)が55%減少、AUC(血中濃度曲線下面積)22%減少、tmax(ピークまでの到達時間)4.5h遅れていました

低用量ピルはホルモン濃度を一定に保つために用法用量を守ることが大切な薬ですので、このような吸収の遅れ・最高血中濃度の低下が避妊効果の減弱につながる可能性は考えなくてはなりません。

避妊効果が低下したという事実を証明するデータはありませんが、避妊目的で低用量ピルを服用されている人にとっては十分に注意すべき結果です。

一番注意すべき期間は?

マンジャロ投与による胃内容排泄遅延作用が強く出るのは、主に投与開始後・増量後の4週間で次第に減弱していきます。しかし、高用量のマンジャロであれば、4週間後以降も胃内容排泄遅延作用(吸収遅延)があると感じる症例もあります。

薬物動態には個人差もあるのと、4週間以降も相互作用は残存することから、私個人としてはマンジャロ投与中は用量・投与期間に関わらず、避妊効果が減弱する恐れがあるとして注意して対策すべきと考えています。

現時点ではコンセンサスは無く、今後避妊効果に関する影響が明らかになる可能性があります。

対策は避妊方法の併用

避妊効果が減弱するという仮定で対策を講じるべきでしょう。具体的には、マンジャロ投与中には他の避妊方法(コンドームの使用など)を併用をしましょう。

避妊は考えていない場合は?

治療目的に低用量ピル(LEP)や黄体ホルモン(ジェノゲストなど)を服用している場合で、特に避妊は考えていない場合には、そこまで神経質にならないで良いのかもしれません。マンジャロを使用する場合の注意点をまとめると↓

「避妊目的で飲んでいる低用量ピル(経口避妊薬)の効果が落ちる可能性があるため、他の避妊法を併用しましょう。避妊以外でのピルの服用、例えば黄体ホルモンのジェノゲストは治療専用だから、そこまで神経質にならなくてOK(ただし薬の効きが少し変わる可能性はある)」

以上、マンジャロと低用量ピルは併用できるのか、その注意点と対策について解説していきました。他のGLP-1受容体作動薬はこのようなアナウンスはされていません。GIPを含有するデュアルアゴニストのマンジャロは、既存のGLP-1受容体作動薬よりも胃内容排泄遅延作用が強いため、「AUC、Cmaxの低下」のデータとして現れたのだと思います。しかし、マンジャロ以外のGLP-1受容体作動薬であっても、胃内容排出遅延作用はありますので、使用中は低用量ピルの吸収が阻害される可能性は常に考えた方が良いと思います(極論、副作用で嘔吐してしまった場合、それは低用量ピルの飲み忘れとほぼ同義だからです)。

以上、参考になれば幸いです。


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参考:The impact of tirzepatide and glucagon-like peptide 1 receptor agonists on oral hormonal contraception