内科

帯状疱疹ワクチン接種で悩まれている方へ

帯状疱疹ワクチンについて

日本では「帯状疱疹の予防」の適応として2種類のワクチンが承認されています。歴史が長く小児などの水痘の予防に適応され、2016年から帯状疱疹にも適応が拡大された「乾燥弱毒生水痘ワクチン」と、2020年に帯状疱疹専用の予防接種として認可された「シングリックス」です。

乾燥弱毒生水痘ワクチンとシングリックスの比較表

乾燥弱毒生水痘ワクチン シングリックス
適応年齢 50歳以上
ワクチンの種類 生ワクチン 組換えサブユニットワクチン
適応 水痘の予防
50歳以上の帯状疱疹の予防
帯状疱疹の予防
接種回数・間隔 1回のみ 2回
2ヶ月以上〜6ヶ月以内の間隔を空けて2回目接種
注射部位 皮下注射
(インフルエンザワクチンと同じ)
筋肉注射
(新型コロナワクチンと同じ)
帯状疱疹発症予防率 51.3% ※1
(ざっくり 50 ~ 60%)
50歳以上: 97.2%
70歳以上: 89.8%
※ 2
帯状疱疹後神経痛(PHN)発症率 66.5% ※1
50歳以上 100%
70歳以上 85.5%
※ 3
費用(自費) 7000円〜1万前後 5〜6万前後
副反応 接種部位の痛み、発赤、掻痒感、腫脹、発赤
※3日~7日で消失
接種部位の痛み、腫脹、発赤、筋肉痛、倦怠感、頭痛
※3日~7日で消失
他のワクチンとの接種間隔 生ワクチンであるため、他の生ワクチン製剤を接種を受けた場合、通常は27日以上間隔を置く 他のワクチンとの接種間隔に制限なし

※新型コロナウイルスワクチンとは14日以上の間隔が必要

効果が期待できる期間 5〜10年
個人差あり5年を超えると有効率は下がると言われる
10年
(2023年時点、今後伸びる可能性あり)
再推奨 5〜7年後に再接種を検討 今の所、10年は持続することが確認されている。(終生免疫を期待)
デメリット 予防効果はシングリックスに劣る
効果の期間も個人差あり
免疫低下の方など接種できない方がいる
高額
2回接種
副反応が乾燥弱毒生ワクチンよりも強く出る可能性がある
こんな方におすすめ 帯状疱疹予防ワクチンに高額な費用はかけることができない。5年(〜10年間)程度そこそこの発症予防をコスパよく求める方 費用がかかっても良いので、発症予防効果が高いワクチンを選択したい。

免疫機能が低下している方で、乾燥弱毒生ワクチンが接種できない方

効果を理解した上で費用をいくらまで許容できるか

新しいワクチンであるシングリックスが圧倒的で、2回接種する必要があり、費用が高いことが難点ですが発症予防効果は、圧倒的で予防効果が長く続くことが示されつつあります。一方、乾燥弱毒生ワクチンは、主に小児で水痘(みずぼうそう)ワクチンとして1986年に日本で認可され、長い歴史を持つワクチンです。発症予防効果と帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果が約6割の効果で、5年以降は予防効果の低下が懸念されます。

結局の所、効果を理解した上で、帯状疱疹ワクチン予防にどれくらいの費用がかけられるかだと思います。それは個人の懐事情や考えによりますので、ワクチンについて、帯状疱疹についてよく御理解の上、接種をご検討ください。

(院長私見)弱毒生ワクチンと新しいシングリックスの関係性は、イメージとしてインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンと似ています。インフルエンザワクチンも発症予防効果はそこそこで、重症化予防が期待できるため、接種する価値があります。一方、新型コロナワクチンも従来とは異なる新しい「RNAワクチン」で絶大な発症予防効果が期待できます。ただ、そのワクチンを持ってしても、感染力の高いCOVIDの発症をすべて抑えることはできませんでした
帯状疱疹ワクチンは、目的として「帯状疱疹の予防」と共通です、したがって、発症予防効果の高いシングリックスに軍配が上がるかと思います。帯状疱疹の原因ウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、新型コロナウイルスのように、感染力が強く、変異株が猛威を振るイメージがありませんし、今の所ワクチン接種で一度免疫を獲得すると長い予防効果が期待できます。(2023年の時点で10年は証明。今後、伸びる可能性あり)

補助金制度のある自治体も増えてきています

補助金制度を整えている自治体も増えてきています。お住まいの自治体での補助金制度ないかをご確認をおすすめします。ワクチンを打たなくても、一生罹患しない人もいます。ただし、一度罹患してしまうと、辛い思いをしたり、帯状疱疹後神経痛(PHN)に悩まされる可能性があります。シングリックスは新しいワクチンのため高額ですが、予防効果は高いです。費用対効果は個人によって異なりますので、よくご検討の上、ご選択ください。

※当院では2023年2月21日現在取扱はしていません。接種可能医療機関へお問い合わせください

帯状疱疹ワクチン接種選択の一助となりましたら幸いです。

参考:
※1.Oxman MN,et al. N Engl J Med.2005;352(22):2271-2284.
日本語概要: https://www.nejm.jp/abstract/vol352.p2271
※2.Lal H. et al.: N Engl J Med.372(22),2087-2096,2015
※3.Cunningham AL. et a.:N Engl J Med.375(11),1019-1032,2016