糖尿病

メトホルミンについて解説!血糖降下作用、副作用、低血糖リスクなど

メトホルミン(ビグアナイド薬)

メトホルミンは、1961年に糖尿病治療薬として発売され、現在も多くの患者さんに処方される歴史ある薬です。血糖降下作用も期待できかつ合併症のリスクを下げる有用な治療薬です。その上、薬価はとても安く、コストパフォーマンスに優れます。しかし、腎機能低下者など処方に注意を要する患者さんもおり、医師と相談しながら使用する必要がある薬です。このページではメトホルミンについてわかりやすく解説していきます。

メトホルミンの血糖降下作用

発売されて半世紀以上経過する薬剤ですが、実はその作用機序の全貌は明らかになっておりません。現在明らかになっている血糖降下作用として

  1. 肝臓での糖新生を抑制する
  2. 末梢組織(筋肉・脂肪)での糖取り込みを促進する(インスリン感受性高める)
  3. 小腸での糖吸収を阻害し、便中に糖を排泄する

があります。

特に3番目の「便中に糖を排泄する」メカニズムは2020年に神戸大学が発表したもので、注目を浴びました。

低血糖のリスクが極めて低い

作用を見て分かる通りインスリン分泌を促進させない薬剤です。そのため単剤使用では低血糖の可能性が極めて低い薬剤です。

合併症の発症リスクを減少させる

メトホルミンの人気を爆発させた有名な研究に、イギリスの大規模研究であるUKPDS 34があります。(United Kingdom Prospective Diabetes Study; Lancet 1998; 352: 854-65. 文献URL)この研究によると、肥満のある2型糖尿病患者にメトホルミンを使って厳格に血糖値をコントロールすると、糖尿病関連エンドポイント・全死亡・脳卒中リスクを有意に低下させたというものです。

糖尿病関連エンドポイント:突然死、高血糖・低血糖による死亡、心筋梗塞、狭心症、心不全、脳卒中、腎不全、足切断、硝子体出血、網膜光凝固、失明、白内障手術

画像引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/47/8/47_944/_pdf/-char/ja

そして特筆すべきは、これらの効果は試験終了後15年間(計25年間)経過しても効果が持続していることがわかりました。(UKPDS 80)

これは遺産効果(Legacy Effect)と広く知られるようになり、2 型糖尿病患者における早期治療による良好な血糖コントロールの重要性が認識されるきっかけとなりました。

動脈硬化リスクのある患者においても総死亡抑制効果を示す

また動脈硬化リスクを有する2型糖尿病患者においても、メトホルミンを使った治療を行うことで死亡率を有意に低下させました。

総死亡を減少させ(ハザード比0.79,95%信頼区間0.65-0.96,p=0.02),また死亡,心筋梗塞および脳卒中の発症を減少させた(ハザード比0.88,95%信頼区間0.79-0.99,p=0.04)

画像引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/47/8/47_944/_pdf/-char/ja

REACH Registry(Reduction of Atherothrombosis for Continued Health Registry; Arch lntern Med 170: 1892-1899. 参考文献URL

血糖値を下げる他にも様々な良い作用が報告されている

糖代謝・合併症以外にも、

  1. GLP-1の分泌促進作用
  2. 腸内細菌への影響
  3. がん抑制作用

など、人体に様々な好影響を及ぼしていることが明らかになりつつあります。メトホルミンは

用量依存性

メトホルミンの血糖降下作用は用量依存性です。つまり、用量が多ければ血糖降下作用が高くなります。後述する消化器症状のリスクも上がりますので、初めは 250mg 錠を1日2錠 朝夕食後に服用し、問題がなければ、1日4錠に増量するなどします。

コスパに優れる薬

糖尿病治療薬はどうしても数が増えてしまうため1錠あたりの薬価は大切です。メトホルミンはなんといっても安いです。250mg錠だと、1錠 約10円しかありません。メトホルミンは徐々に錠数を増やしていき、最大で1日2,250mg (250mg錠で9錠)使用できます。最大量服用したとしても約90円です。他の新しい糖尿病治療薬だと1錠で150円程度することもあるので、如何にメトホルミンが安いかがわかるかと思います。安い上に血糖降下作用も十分で、合併症のリスクまで下げる作用がある
メトホルミン、素晴らしい治療薬ですね。

副作用

消化器症状(下痢・便秘・吐き気)

メトホルミンの代表的な副作用として、消化器症状(下痢・便秘・吐き気)があります。副作用も用量依存性(用量が多ければ出やすい)で、血糖値を下げようと用量を上げると副作用のリスクが上がります。目安として1回 服用量が750mg(250mgだと3錠)を超えると消化器症状が出やすくなります。

乳酸アシドーシス

稀に、乳酸アシドーシスという重篤な副作用を起こすリスクがあります。症状としては腹痛、嘔吐、頻呼吸、倦怠感などがあります。昔は、乳酸アシドーシスへの懸念から使用されることがなくなった時期がありますが、腎予備能(eGFR)を定期的にチェックし、適正に使用すればそのような副作用は極めて生じにくいと考えられます。また近年の研究では、メトホルミンが乳酸アシドーシスのリスクを増加させず、総死亡の減少、心不全による入院の減少をもたらしたとの報告もあります。( Ann Intern Med 2017; 166: 191-200. Ann Intern Med 2017; 166: 191-200.文献URL

注意を要する人は以下のような人です。臨床的には高齢者であっても、腎機能が保たれていれば処方されています。

  1. 腎機能障害患者(透析患者含む)
  2. 脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など患者への注意・指導が必要な状態
  3. 周術期、全身状態が悪い患者

URL:「メトホルミン適正使用に関するRecommendation

まとめ

メトホルミンは歴史があり、血糖降下作用も十分期待できかつ合併症のリスクを下げる有用な治療薬です。その上、薬価はとても安く、コストパフォーマンスに優れます。しかし、腎機能低下者など処方に注意を要する患者さんもおり、医師と相談しながら使用する必要がある薬です。

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