メディカルダイエット

マンジャロのSURPASS試験結果を体重に絞ってまとめてみた

マンジャロ(一般名: チルゼパチド)の承認の際に実施されたSURPASS試験を紹介します。

マンジャロはインスリンの代替品ではありません。インスリン治療中の方は決して自己判断で中止しないでください

 

マンジャロについて

GIP、GLP-1受容体に両方に作用する世界初のデュアルアゴニスト

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、インクレチンという消化管ホルモンであるGIP(ジーアイピー)およびGLP-1(ジーエルピーワン)の受容体双方に対するアゴニストで、GIP/GLP-1(ジーアイピー/ジーエルピーワン)受容体作動薬という新しい種類の注射薬です。マンジャロは既存のGLP-1受容体作動薬(リベルサス、オゼンピック、ビクトーザ、サクセンダ等)よりも強力なHbA1c改善作用・体重減少作用を有します。

このマンジャロが承認され、医薬品として世界で羽ばたくきかっけとなった臨床試験がSURPASS試験です。そして、先程お伝えした既存のGLP-1受容体作動薬よりも優れているということが実証されたデータの元となった試験です。

SURPASS試験とは

SURPASS試験とはマンジャロ(一般名:チルゼパチド)の国際共同第Ⅲ相臨床試験です。第III相臨床試験は、国の承認を得るための臨床試験(治験)の最終段階で、多くの患者(数百から数万人)を対象に、新しい治療法・薬と既存の薬やプラセボ(偽薬)との比較し、有効性や安全性を証明することが目的です。また期間も長期間にわたり治療現場での使用を想定した試験です。

[注意]このページでは体重減少効果に絞って解説をします

マンジャロは2型糖尿病の治療薬です。SURPASS試験では糖尿病患者にマンジャロを投与して、その血糖降下作用や副作用などを主に見ています。体重減少効果はあくまで副次的な評価項目です。インスリンとの比較もありますが、マンジャロはインスリンとは目的や用途が異なります。マンジャロはインスリンの代替品ではありません。インスリン治療中の方は、決してインスリンを自己判断で中止しないようにしてください

SURPASS-1 マンジャロVSプラセボ

参考: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34186022/

Lancet. 2021 Jul 10;398(10295):143-155

マンジャロとプラセボを比較した試験です。

対象集団

成人(18歳以上)で、食事療法と運動療法のみではコントロールが不十分な2型糖尿病患者 478名(日本人 82名)、年齢 54.1歳、BMI 31.9,HbA1c 7.9%

上記集団にマンジャロと偽薬(プラセボ)を投与し、40週後の体重の変化量を調べました。

ベースライン(全集団平均体重85.8kg)からの変化量は5mgで-7.0kg、マンジャロ10mgで-7.8kg、マンジャロ15mgで-9.5kgで、プラセボ -0.7kgと比較して体重減少効果が高いことがわかります。

ベースラインからの体重変化の推移

ベースライン(全集団平均体重85.8kg)からの変化率は5mgで-7.9%、マンジャロ10mgで-9.3%、マンジャロ15mgで-11.0%でした。

SURPASS-2 マンジャロVSオゼンピック1mg

参考: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34170647/

N Engl J Med. 2021 Aug 5;385(6):503-515

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)とオゼンピック(一般名:セマグルチド)1mg 皮下注を比較した試験です。

対象集団

経口血糖降下薬(Met) 内服下、2型糖尿病 1879名 年齢 56.6歳、BMI 34.2(ベースライン平均体重 93.8kg),HbA1c 8.3%

上記集団にマンジャロとセマグルチド 1mgを投与し、40週後の体重の変化量を調べました。

ベースライン(全集団平均体重93.8kg)からの変化量は5mgで-7.8kg、マンジャロ10mgで-10.3kg、マンジャロ15mgで-12.4kgで、セマグルチド1mg -6.2kgと比較して体重減少効果が高いことがわかります。

マンジャロが承認されるまで血糖及び体重減少効果が一番強かったオゼンピック1mgと比較しても明らかにマンジャロのほうが効果が高いことがわかります。

ベースラインからの体重変化の推移

ベースライン(全集団平均体重93.8kg)からの変化率は5mgで-8.5%、マンジャロ10mgで-11.0%、マンジャロ15mgで-13.1%でした。

SURPASS-3 マンジャロVSインスリンデグルデク

参考: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34170647/

Lancet. 2021 Aug 14;398(10300):583-598

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)とインスリンデグルデクを比較した試験です。

対象集団

経口血糖降下薬(Met ,SGLT2i 25%) 内服下、2型糖尿病 1444名、病歴8.4年、年齢 57.4歳、BMI 33.5,HbA1c 8.2%

上記集団にマンジャロとインスリンデグルデクを投与し、52週後の体重の変化量を調べました。

ベースライン(全集団平均体重94.5kg)からの変化量は5mgで-7.5kg、マンジャロ10mgで-10.7kg、マンジャロ15mgで-12.9kgで、インスリンデグルデクで  +2.3 kgでした。対照と比較して体重減少効果が高いことがわかります。※

※インスリンは同化ホルモンですので体重増加作用があります。これはマンジャロと逆の作用ですので、比較して差があるのは当然です。

SURPASS-4 マンジャロVSインスリングラルギン

参考: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34672967/

Lancet. 2021 Nov 13;398(10313):1811-1824.

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)とインスリングラルギンを比較した試験です。

対象集団

経口血糖降下薬(Met 95%、SGLT2i 25%、SU 54%) 内服下、ハイリスクな2型糖尿病 2002名、病歴10.5年、年齢 63.6歳、BMI 32.6,HbA1c8.5%

上記集団にマンジャロとインスリングラルギンを投与し、52週後の体重の変化量を調べました。

ベースラインからの変化量は5mgで-7.1kg、マンジャロ10mgで-9.5kg、マンジャロ15mgで-11.7kgで、インスリングラルギンで+1.9kgでした。対照と比較して体重減少効果が高いことがわかります。※

※インスリンは同化ホルモンですので体重増加作用があります。比較して差があるのは当然です。

SURPASS-4では、CVDハイリスクな糖尿病患者において、マンジャロはインスリングラルギンと比較して血糖低下効果、体重減少効果が高かったという結果でした。104週まで観察し、心血管リスクの差がないことも示され、腎イベント(複合アウトカム)抑制効果があることも示されています。

SURPASS-5 マンジャロVSプラセボ

参考: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35133415/

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)とプラセボを比較した試験です。SURPASS-1は注射治療をしていない(投薬されていない)未治療の2型糖尿病でしたが、SURPASS-5では既にインスリングラルギンを投与してもなお血糖コントロール不良の2型糖尿病患者にマンジャロを追加したらどうなるかという目的で実施されました。

対象集団

インスリングラルギン使用(平均 37.6単位) 2型糖尿病 475名(日本人82名)病歴13.3年、年齢 61歳、BMI 33.4,HbA1c8.3%

上記集団にマンジャロとプラセボを投与し、40週後の体重の変化量を調べました。

ベースライン(全集団平均体重95.3kg)からの変化量は5mgで-5.4kg、マンジャロ10mgで-7.5kg、マンジャロ15mgで-8.8kgで、プラセボ 1.6kgと比較して体重減少効果が高いことがわかります。

ベースラインからの体重変化の推移

ベースライン(全集団平均体重95.3kg)からの変化率は5mgで-5.6%、マンジャロ10mgで-7.8%、マンジャロ15mgで-9.2%でした。

今回は基礎インスリン(インスリングラルギン)で治療している方に対して、マンジャロを追加することで体重を減らしながら、さらに血糖コントロールも改善したという結果が得られています。基礎インスリン(インスリングラルギン)で治療している方で血糖コントロールが良くない患者に対して、マンジャロの有用性が示されました。

SURPASS-6 マンジャロVSインスリンリスプロ

参考: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37786396/

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)とインスリンリスプロを比較した試験です。SURPASS-6では既にインスリングラルギンを投与してもなお血糖コントロール不良の2型糖尿病患者にマンジャロもしくはインスリンリスプロを投与してその有効性と安全性を比較しました。

対象集団

インスリングラルギン使用(平均 46単位) 2型糖尿病、1428名、病歴14年、年齢 59歳、男性42%、BMI 33,HbA1c8.8%

上記集団にマンジャロとインスリンリスプロを投与し、40週後の体重の変化量を調べました。

ベースライン(全集団平均体重91.0kg)からの変化量は5mgで-6.7kg、マンジャロ10mgで-9.2kg、マンジャロ15mgで-11.0kgで、リスプロ +3.2kgと比較して体重減少効果が高いことがわかります。

※インスリンは同化ホルモンですので体重増加作用があります。比較して差があるのは当然です。

今回は基礎インスリン(インスリングラルギン)で治療している方に対して、従来の食前インスリンの追加と比較して、体重を増やさずに(むしろ減らして)血糖コントロールも改善したという結果が得られています。従来の食前インスリン追加した頻回注射療法に代わる治療の選択肢としての有用性が示されました。